バタンという車のドアが閉じる音に、あたしの耳がぴくんっと動く。

「モカちゃんのおやつでしょ? エサはあっちにもあるか。おもちゃもいるかなぁ」

あたしのためのものみたいだけど、鞄の中身の選別に余念のないミネちゃん。さっきから、荷物を出したり入れたり、落ち着かない。
ミネちゃん。別にあたし、毎日おやつ食べなくても大丈夫よ? ない日があっても、我慢するけど。

「おーい。まだかぁ? 美音」

「待ってよ片瀬くん。こっちだっていろいろあるんだからぁ」

カタセくんは、カイシャに行く人みたいな格好をしている。引っ掻いたら怒られそうだなぁと思いつつ、あたしは尻尾をくるりと揺らした。

今日は、おかあさんとおとうさんとカズコさんのいるおうちに行くんだよ。
なんかよくわからないけど、ご挨拶にいくんだって。

あたしは、コタツが楽しみで仕方ない。
あれ、あったかかったなぁ。カズコさんと場所の取り合いになるけど、一年たってあたしだって少しは大きくなったんだから。そろそろカズコさんには負けないからねー!