「なんで泣くの? やっぱり嫌? まだ早いかな」

なおも問いかけるカタセくんに、ミネちゃんは大きく首を横に振った。

「っく、……嬉しいの」

「美音」

「私、なんか男運無くて、いつも振られてばっかりで。……だから、深入りするの怖かったけど。……片瀬くんなら信じられそう」

「信じていいよ。裏切らないから」

カタセくんがミネちゃんの傍に寄って、あたしから顔が見えなくなった。

頭の上で、チュって音がする。
あああ、あたしを間に挟んだままイチャイチャするのはやめてよう。

「みゃーおん」

なんとか二人の間から逃げ出し、ミネちゃんの足元に擦り寄る。
でも腕から出ちゃうと寒い! 寒いのよ! なんとかして頂戴。

「みゃおん、みゃおん!」

「モカのやつ、祝福してくれてる」

違うもん。あたしは寒いだけ。
早くお家に帰ろうよ。

「……片瀬くん、モカちゃんと仲良くしてくれる?」

ミネちゃんはカタセくんの腕の中で甘ったるい声をだす。

「うん。もちろん」

「みゃー!」
だけどあたしは断固反対!
カタセくんと仲良くするのなんて嫌よ。

「ほら、モカも仲良くするって」

違うのに。
おのれカタセくんめ。勝手なこと言わないでよう。
なんでニンゲンはあたしの話を分かってくれないんだろう。

「……嬉しい」

でも、ミネちゃんのこんな声を聞いちゃったら、我慢するしかないか。

だってあたしは、泣いてるミネちゃんより、笑ってるミネちゃんの方が大好きなんだもの。


【Fin.】