「……片瀬くんが来てくれて安心した。モカちゃんも見つかってよかった。モカちゃんがいなくなったら生きていけないもん」

「そんなにモカが大事?」

「うん。だって、子供みたいなもんだよ。家族だもん」

「でもモカは先に死ぬだろ。そんなに依存してちゃ心配だよ」

そうね。あたしはネコだもの。
カタセくんやミネちゃんほど長生きはしないなぁ。
でもまだまだ元気よ。勝手に殺さないでちょうだい。

「嫌なこと言わないで」

「ごめん。でもさ」

カタセくんが立ち止まる。ミネちゃんが、不思議そうに後ろを振り向いた。

暗闇の中、カタセくんの顔は真剣そのもの。珍しく決まっている顔だわ。
これってあたしには見えるけど、きっとミネちゃんには暗くてよく見えてないんだろうなぁ、残念。

「その時美音が壊れないように、すぐ傍に居たいよ、俺」

「片瀬くん?」

「美音と、俺と、モカで、家族にならない?」

そこで、あたしは気がついた。
昨日の電話の“けっこ”って、もしかして“結婚”のことかぁ!

「みゃーおん、みゃーおん」

ようやく分かってスッキリして、嬉しくって鳴いたら、頭の上に落ちてくる雫。

ありゃ。ミネちゃん泣いちゃってる。

「……モカの方が先に返事してくれたけど?」

くすりと笑って覗き込むカタセくん。

返事なんてしてないよ?
あたし、カタセくんなんて大嫌いだからね?