そして顔を上げると、あたしを見て戸惑ったように問いかけてきた。

「にゃーご」
君の名前、もう一度聞いてもいいですか?

あたしは一瞬言葉に詰まってしまった。ママがつけてくれた名前は“チビ”。でも今のあたしは“モカ”。
あたしはもう、モカとして生きることに幸せを感じてる。

「みゃ」
……あたしはモカよ。

「にゃーご」
モカ。……可愛い名前ですね。

「みゃおん」
うん。あたしの自慢よ。

「にゃご」
また会えますか?

「みゃーおん」
うん。今度あたしのご主人を紹介するね。
ミネちゃんって言うの。優しいんだよ。

「にゃご」
それは嬉しいです。


あたしは、スカイさんににっこり笑いかけた。

あたしのパパかもしれないスカイさん。だけど、それは確かめない方がいい気がした。
だってあたしの今の家族はミネちゃんで、それ以上にはいない。

「みゃーおん」
またね、スカイさん。

「にゃーご」
またね。モカさん。

あたしは、振り向いて駈け出した。スカイさんが、家に戻ってくれたらいいなって思いながら。
そして早くミネちゃんに会いたいって思いながら。



「ただいまぁ」

「みゃーおん」

玄関先でお出迎え。
今日も遅く帰ってきたミネちゃんは、あたしを見つけるとぱっと笑顔になった。

「ああーん、癒されるぅ。モカちゃん今日もお出迎えありがとう」

「にゃーおん」

そうでしょそうでしょ。あたし、お利口にして待ってたんだから褒めてよう。

「可愛い。大好き、モカちゃん」

「みゃーお」
うんうん。もっと言って。あたしもミネちゃん大好き。

「ここのところ忙しくしてて、ごめんね。明日はお休みだから、お散歩行こうね」

ぎゅーって抱きしめられるととっても嬉しくて。
あたしは、今どこに帰ったのかとスカイさんを思い返す。

きっと会えるよね。
また、あの駅前で。

あたし、また会いに行くもの。



【fin.】