振り返った私を見る桜ちゃんの目は、ちょっと冷たい。



桜ちゃんのせいで怒ってるのにそんな目で見ないでよ。


面倒なのは、どっちよ。



そう感じた途端、桜ちゃんのご機嫌を取ろうとしていたことが馬鹿みたいに思えた。



いいもん。


面倒だって言われたって知らないもん。



ふんっ、と頭を振って彼から顔を背ける。


桜ちゃんが嘘をついて泥棒しちゃったからいけないんだ。


もう知らないもん、桜ちゃんのせいだもん。



「どうせ桜ちゃんにとっての私は幼なじみの〝好き〟なんだ」


「え、何て言った、水鈴?」



唇を尖らせてそう呟いた私は、桜ちゃんの声に反応しなかった。


そして大声で叫んで、帰り道を駆け出した。



「桜ちゃんのばーーか!」



は、と桜ちゃんの声が聞こえた。


どうせ桜ちゃんのことだから私のことを呆れた顔で見て突っ立っているのだろう。


いいよ、もういいよ。


桜ちゃんのばか。


桜ちゃんを頭の中で罵倒しまくって逃げるように走る。



「うおっ」


「ひゃっ!」



すると、そのせいで人にぶつかってしまった。


そしてそのままその人の力強い腕の中に倒れこんでいく私の体。



「ご、ごめんなさいっ!」



慌てて離れようとすると、なぜか離れることを拒まれて、優しい声が頭上から聞こえてきた。