まさか、この流れで告白されるなんて思ってもみなかった。
桜ちゃんが私のことを、なんて、考えたこともなかった。
「う、嘘、だよね……?」
どうしてかな、相手は桜ちゃんなのに。
胸がどうしようもなく高鳴る。
桜ちゃんのまつげが、髪が、揺れるだけで、なぜかすごくドキドキする。
やばい、そう思った時には気がついてしまった。
泥棒された。
私の心……恋心を。
心が大騒ぎになっている私に向かって、桜ちゃんは目を丸くした。
「ありゃ、嘘なのよくわかったね」
「………はい?」
悪気のなさそうな泥棒は微笑んで、躊躇なく爆弾を落とし逃走した。
「水鈴のこと好き。嘘だけど」
それは、花岡水鈴(はなおか みすず)が無気力美少年な桜庭晃生(さくらば こうき)の嘘を、世界一嫌いになった瞬間だった。



