昨日の帰りに聞いたことと同じこと。


これが始まりだったんだけど。


桜ちゃんはわかるかな。




「水鈴」


「はーい」




呼ばれて返事をすると、桜ちゃんが立ち止まって私を見た。




「俺、水鈴のこと本気で好きだよ」


「……嘘?」


「‥‥嘘って言ったらどうする?」


「逮捕する!」




ぎゅうっと桜ちゃんの首に捕まる。




「苦しい」


「いいじゃん。いくら泥棒さんでも人だから、殺しはしないもん!」


「人だから、なの?」


「ううん。桜ちゃんだから」


「うん」



夜空に、きらきらと星が瞬いた。




「水鈴」


「なに?」


「好きだよ」


「…っ、私も桜ちゃんのこと好き!」




桜ちゃんからの初めてのちゃんとした〝好き〟に、緩む頬に熱が溜まっていくのを感じた。



泥棒さんのこと、だいぶ前から捕まえられていたみたいで、嬉しくて。


何度でも逮捕したいと思うくらいに好きな人と想いが通じあったことが、




「だいすき」




とっても幸せなんだ。



嘘つきは、泥棒の始まり。


桜ちゃんの嘘は、幸せの始まり。





fin.