変わらない温かい手に私はえへへ、と笑みを浮かべた。


ドキドキしすぎて私おかしいのかな。


頭がなんか変だよ…。



「一緒にいて、桜、ちゃ……」



一層頭がくらくらして、私は彼の名前を呼んだ。


温かい手が、ぎゅうっと私の手を握って、



「水鈴、一緒にいるよ」


「う、ん……」


「おやすみ」



優しい声音が嬉しくて少し安心した。


桜ちゃんはすごいなぁ。


何でもわかっていたのだと、やっと気がついて口元が緩んだ。


ありがたいなぁ。


そう感じたところで、私は意識を手放した。






目を閉じて自分の肩に寄りかかる水鈴を見て、桜庭晃生はぼそりと呟いた。




「熱あるのくらい気づけ。ばか水鈴」




だが、言葉とはうらはらに水鈴を見る瞳はひどく優しい。


ヘッドフォンから流れるクラシックだって、水鈴が寝やすいようにとわざわざ流したもので。


水鈴の友達に手伝ってもらって理科準備室まで呼んだのだって、水鈴の体調が良くないことに気がついていたからである。



「……よいしょっと」



準備室の鍵と戸を開けた彼は寝息を立てる水鈴をお姫様抱っこした。