「水鈴」


「あ、うん?」



机につっぷしたままの桜ちゃんの手と自分の手がいつの間にやら繋がれていた。


こうやって自然な動作で手を繋いでくるけれど、特に何も意味がないということを私は知っている。


だって〝友達〟だから。



「俺また寝ちゃうよ、いい?」


「え、あ、待って! 帰ろ、帰るよ!」



慌ててそう返すと、桜ちゃんは「じゃあ起こして?」とふわりと笑った。


イケメンな桜ちゃんが、微笑んでお願いするところを見せられると、断れないからやめてほしい。


どうせ断れないことをわかってて微笑んでるんだ、ちくしょう。


私は小さくため息をついて、桜ちゃんの手を引っ張り起こした。



「水鈴、ありがと」



ふわふわとしたワンちゃんのような髪の毛を桜ちゃんが揺らして笑う。


頷いた私は、未だ繋がれている手を離そうと指を外した。


だけど、なぜか桜ちゃんが手を離してくれない。