「水鈴ってさ」


「……うん」



ダメダメ、ドキドキしちゃダメ!


そう思いながら、彗ちゃんのことを見上げる。


あ、あれ、なんかすごい真剣?



「………水鈴っ!」


「はいっ!」



玄関から飛び出してきて私を呼んだ人の方へ私は顔を向けた。


そこから見えた顔に、目を見開く。



「さっ、桜ちゃん!?」



それは、無気力なはずの彼にはあるまじき勢いで出てきた桜ちゃんだった。


桜ちゃんはそのままの勢いで、彗ちゃんの手が重ねられていない方の私の手を掴んだ。



「なっ、どうしたの、桜ちゃん」


「行くよ」


「えっ」



あろうことか、桜ちゃんが私の手をぐいぐい引いて学校への道を進んでいく。


まさかこんな日がくるなんて、ってくらいビックリ。



「あ、っと彗ちゃん、話はまた今度聞くね。行ってきます!」



態勢を崩しながらそう言って彗ちゃんに手を振れば、振り返してくれてホッとした。


何を言おうとしてたかわかんないけど、ちゃんと後で聞かせてもらえばいっか。


なんて考えていた私には知る由もなかった。


彗ちゃんが「やれやれ」なんて言って私たちを見ていたのを。


彼が何もかもわかっていて桜ちゃんへ意地悪したのだということを。