バタン、桜ちゃん家の扉が閉まって、私は家の前の手すりに軽くお尻を乗っけた。



「さーて、警察出動しますよー」




ぼそりと呟いて、私は拳を握ってニヒルな笑みを浮かべてみせる。


桜ちゃんはモテるんだから、余裕持ってちゃダメ。


だから、恋心に気づいて早々に動き始めなきゃいけないの。


ふふん、私、頑張っちゃうもんね。


本気出しちゃうもんね。




「おはよう、水鈴」


「えっ、あ、彗ちゃん!」



玄関の戸を開け、ひらりと優雅に手を振って出てきた彗ちゃんが、私の横に腰を下ろした。



「あれ、彗ちゃん大学は?」


「今日は3限からなんだ」


「あーだからゆっくりでいいんだ!」



朝ゆっくりできるなんて、大学生はいいなぁ。



「あのさ、水鈴」


「ん?」



彗ちゃんの手が、手すりにつかまっている私の手に重なる。


綺麗な顔が視界いっぱいに広がって不覚にもちょっとドキッとする。


だってさ、今まで好きだった人なんだもん。


ドキドキしちゃうのは仕方ないでしょ?