「わぁ、桜ちゃんお手製のパン耳!」



パンの耳をカリッと揚げて甘いお砂糖がつけてある桜ちゃんの得意料理が、玄関に置かれたバケットの中に入っていた。



えへへ、さっすが桜ちゃん。


頬を緩めて1つパン耳をつまむ。



「美味しーい」



ニコニコと自然と笑みがこぼれる。


あーあ、ホント困ったなぁ。



「また泥棒されちゃった」



口を尖らせながらも、心の中はさっきとは違って晴れやかで。


目なんてすぅっと細くなっちゃって。


だって、なんだかんだ桜ちゃんが自分のことを見ていてくれたことがわかって嬉しいんだもん。



よーし、決めた。


桜ちゃんが泥棒さんなら、私は警察になろう。


そして、泥棒さんをとっ捕まえて、私を好きにさせた罪を認識させるのだ。



「私を好きにさせた罪は重いんだぞー」



ぷくっと頬にパン耳を詰め込んでそう言う私。


私の方が泥棒さんのことを好きになっていることも悔しいから、これも超えさせよう。


「私のこと大好きだって言わせてやるんだから」



私は一際長いパン耳で、桜ちゃんの部屋に当たる位置を指差した。



「逃がさないぞ、泥棒さん」



さて、これが無気力な泥棒さんと純情な警察の恋の追いかけっこの始まりである。