「お母さんっ…!遅れてごめんなさい!」
正門前に見慣れた車を見つけ、慌てて助手席に乗り込む。
「そんなに待ってないわよ〜!さあ、早速シンさんの家に向かいましょうか」
語尾に音符マークが付くんじゃないかと思うくらい、上機嫌なお母さんに私も笑顔で頷いた。
お母さん、嬉しそうだなぁ…。
満面の笑みでハンドルを握るお母さんの横顔に、私も吊られて頬が緩む。
今日、引っ越しする先は新居ではない。
お母さんの再婚相手である、高神シンさんの自宅だ。
シンさんは大きな一軒家に息子さん1人と住んでいるらしく、お母さんと娘の私は今日からそこで一緒に暮らすことになった。
息子さんは、私と同級生らしい…らしい、と言うのは、まだ会ったことがないから。
都合が付かず、1度も面会出来なかったのだ。

