「いま、舜君といたくないっ」


「どうして?なんで俺といたくない?」



抱きしめられる腕から逃れようともがくのに、舜君はそれを許してくれなかった。


強く抱きしめられて、さらに涙が溢れる。



「だ、めだよ、彼女がいるのに、私にこんなことしちゃ、ダメだよっ…!」


「なんで?俺が好きなのはつぼみだって、言っただろ?」


「でも…あの女の子と付き合うんでしょっ?舜君、さっきそう言った…っ」



私のことが、好き?



「言ってること、めちゃくちゃだよっ…」



そんな嘘は、つかないでっ…。


もう、止まらなかった。



「私は、私はっ、舜君のこと好きになっちゃったのに…っ。他の女の子のとこ行かないでって、私のことだけ好きでいてほしいって、言おうと思ったのにっ…」



次々と溢れ出す言葉たち。

今更言っても仕方ないのに、舜君の気持ちはもう無いのに、わかってるのに、



「すぐに変わるような気持ちなら、言わないで、欲しかったっ…、優しく、しないで…っ」



私は、なんて女々しい女なんだろうっ…。


自分が惨めすぎて、情けない。



数秒の静寂が、私と舜君の間に流れる。




「………つぼ、み?」



それを破ったのは、まるで信じられないと言うかのように私の名前を呼んだ、愛しい人の声だった。