雷よりも、他のことに驚いていた。 つぼみが顔を上げる。 目を見開いて俺を見て、そして、小さな唇が開かれた。 「黒石、君…?」 ーーーーああ、そうだったか。 俺も今思い出した。 あの日、最後に言葉を交わした日、俺がつぼみに告げた最後の言葉はーー 『時田さ…俺が男ってわかってる?』 ーー覚えて、たのか? 俺とつぼみが見つめ合い、この空間だけは時が止まったようだった。 雷はもう、なることはなかった。