コンラートとは、誰だろうと思ったけど、すぐにコンラート・ロズベルグのことだと気づく。
奏は戸惑いを顔に浮かべて、日野村先生の真意が見えずに返答に困っているようだ。
なぜ紹介したいのかという説明はないまま、日野村先生は奏の肩を抱くようにして、強引にステージに向けて歩き出す。
私も荷物を持って、ふたりの後に緊張しながらついて行く。
胸がドキドキと高鳴るのは、この出会いが奏になんらかの変化をもたらすことを期待するからなのか……。
ステップに足を踏み出し、ステージに上がる。
ステージ上では片付けが始まっていて、関係者が音響機材などを撤収していた。
邪魔にならないようにグランドピアノのそばに寄ると、つい先程、拍手喝采を浴びていたロズベルグが舞台袖から出てきて、奏に話しかけた。
世界的に有名なバイオリニスト、コンラート・ロズベルグは、五十代くらいに見えるドイツ出身の白人男性で、肩までのチリチリパーマのボリュームある髪型が印象的。
いかにも巨匠という風格を備えていて、気後れする私は、日野村先生と奏の後ろから隠れるように覗いていた。


