バイオリンは間違いなく極上品。
でも私は日野村先生のピアノ伴奏に意識が持っていかれて、聴き惚れる。
『先生のピアノの素晴らしさ』と言った奏の言葉は、その通りだった。
主旋律を奏でるバイオリンを引き立て、この音楽を下から揺るぎなく支えている。
伴奏経験の豊富さを感じる演奏だけど、バイオリンと音を絡め合う部分では、この人のピアノソロを是非聴いてみたいと思わせられるような、音の響きの美しさや力強さを感じた。
私が今までに聴いた生演奏の中で、二番目に心が震える。
もちろん一番は、五歳の奏が弾いた『月の光』で……。
二曲目が終わり、大きな拍手が鳴り響く中で、奏が私に聞く。
「日野村先生の演奏、どう思った?」
「すごくよかったよ。音が美しくて心が震えた。でもーー」
言葉を区切った私に、奏は訝しげな顔をする。
茶色の瞳を真っすぐに見つめ、私は正直な感想を口にした。
「五歳の奏が弾いた『月の光』には敵わない。
奏のほうがずっと素晴らしいと思う。
今でも耳に焼き付いてるよ。一音一音がキラキラと輝いて、その音が紡がれて織り上げられると、あまりの美しさに涙が出てくるような演奏だった……」
奏の瞳が揺れていた。
私の言葉に、心が揺さぶられているのか……。
でも奏は瞳を閉じて、すぐに動揺を隠してしまう。


