「アーンして?」
「綾……こういう恥ずかしいのは、やめて」
「いいじゃない、付き合ってるんだから。
もっと恋人っぽいことを、してみたいんだよ」
奏は仕方ないと言いたげに、私のフォークからりんごを食べてくれた。
そして「恋人っぽいことか……」と、私の言葉を繰り返し、なぜか私の膝の上のお弁当箱を芝生に下ろした。
なにがしたいのだろうと思って見ていたら、突然、私の太ももを枕に、ゴロンと仰向けに寝そべった。
これはもしや……膝枕?
予想外の行動に、口をあんぐりと開けて、真っ赤になると、クスリと笑われた。
「恋人みたいなこと、したいんでしょ?
これでいい?」
「うん……」
りんごをアーンするより恥ずかしいと思うのは、私だけ?
それでも、やめてほしくないけど……。
奏は目を瞑り、眠ってしまったかのような、静かで規則的な呼吸を繰り返している。
綺麗な寝顔……。
骨格や喉仏には、ちゃんと男らしさが備わっているのに、ひと言で表現するなら、奏は綺麗だ。
涼しげな切れ長二重の瞳に、筋の通った鼻と形のいい唇。
全てのパーツが白い肌の上にバランスよく配置されて完璧だけど……物足りない。
キラキラと眩しい笑顔が、夢を追い求める情熱が、未来を信じる前向きさが、足りないよ……。


