今、ステージの上に演奏者はなく、音は止んでいる。
十三時までの休憩時間となり、午後の部が始まるまで観客は、芝生の上でお弁当を広げたりと、ピクニックみたい。
奏は約束通り帰らずに、芝生の上に座って私を待っていてくれた。
そのことにホッとして笑顔を向け、貸してもらったジャケットを返すと、私も隣に腰を下ろした。
バッグから取り出したのは、お弁当箱。
中にはサンドイッチと、カットフルーツが入っている。
梨奈と最後まで音楽祭を楽しむつもりだったのでお弁当を持ってきたのだけど、奏は……。
「お昼ご飯、持ってきた?」と聞いたら、「いや。綾の演奏が終われば帰るつもりだった」と言われる。
「じゃあ、半分こして食べよ?」
「お腹空いてないからいらないよ。
俺のことは気にせず食べて」
卵サンドを差し出しても、奏は受け取ってくれない。
しかし、奏のお腹の虫がグウと鳴き、しまったと言いたげな顔の奏に笑わせられた。
「お腹は正直だね〜。はい、食べてよ。奏が食べないと私も食べにくい」
「じゃあ……遠慮なく」


