奏 〜Fantasia for piano〜


ステージ袖に待機すると、緊張が増していく。

梨奈も顔が強張っていて、お互いに「大丈夫だよ」「昨日はうまくいったんだから」と励まし合い、出番を待っていた。


今演奏中なのは、バイオリンとピアノのデュオ。

大人のどっしりと聴かせるような演奏で、めちゃめちゃ上手なのに、アマチュアらしい。


そのことに少しホッとする。

今日の目玉は、世界的に有名なバイオリニスト。

ベルリンフィル管弦楽団に所属しながら、ソリストとしても活躍している大物で、ピアノ以外の知識に乏しい私でも、コンラート・ロズベルグの名前を知っている。

そのロズベルグさんはもちろんトリで、その人の前後や、迫力あるオーケストラの後じゃないから、私達の演奏でもそんなに聞き劣りしないはず……だと思いたい。


前の演奏が終わり、拍手が湧く。

素晴らしい演奏を披露した大人のふたりが引き上げてきて、高校生の私達に「楽しんで」と声をかけてくれた。


そうだよ、楽しまないと。

舞台が用意されていて、たくさんの人に私達の音楽を聞いてもらえることは、幸せで嬉しいことなんだから。