「大きな怪我もないようだな。・・・私はこの国の王子、ウィルだ。そなたは?」

「わた・・・しは、ゆうり、野中悠里です・・・私はなぜここに?」

聞きなれない名前なのか、イザベラは眉を顰めた。

「ユーリか。そなたはこの城の敷地内にある庭に倒れていたのを、護衛が見つけたのだ。気を失っていたのでこの客室へ運んだのだが。・・・しかしこの城の敷地内は厳重な警備で、許可なく入る事は出来ない。そなたはどうやって侵入したのだ?」

女だからなのか、それは良く分からないけれどやさしく問いかける。

が、警戒はしているようだ。かすかに感じる殺気が怖い。

私は恐る恐る答えた。

「そ、そんなの、私が聞きたいくらいです。家に帰ろうと歩いていたら、いきなり足元が崩れ目の前が真っ暗になって、それで気がついたら・・・ここにいて・・・」

その言葉に、ウィルの表情が一瞬で変わった。

「・・・そうか。イザベラ、少し席を外してくれ」

「承知致しました、皇太子殿下」

イザベラは一礼をすると部屋を出る。
完全に部屋から離れるのを確認して、ウィルは話し始めた。


「ユーリ、そなたはこの世界の人間ではないな?」

「・・・え?」

「お前は異世界から来た人間だ、と言っているんだ」

「は!?」

一瞬、何を言っているのかよく分からず、そう聞き返してしまった。

私がこの世界の人間ではない?
確かに聞いた事もない国の名前だし、人種も違うなとは分かるけど・・・。

ここは日本、いや地球ではない、ということ?