踊りながら、ウィルは口元を私の耳に寄せる。
そして小さな声で囁いた。


「明日は決して私の側から離れてはいけないよ。私の隣りにいるんだ。そして、私以外の誘いは断るように。いいね?」

と、ウィルは囁いた。
ウィルの吐息と声が、私を支配していく。


まるでなにかの魔術にかかったかのように、身体に力が入らない。

周りの音が聞こえなくなって、ウィルの声だけが私の中に響く。

「返事は?」


「・・・っ、はい・・・」


声にならない声で答えた。
それが精一杯だった。


「いい子だね」

そう言うと、ステップを止めそしてにこりと笑って、私を見つめた。

私の顎に手がかかる。

そしてそのまま顎を引き上げ、唇に温かいものが触れた。


「!!」

あまりの出来事に思わずウィルの身体を押し、身体から離れた。


「な、なんで・・・」

ウィルは意地悪そうな笑みを浮かべる。

その笑みは、動揺している私を楽しんでいるように見えた。