その想いが強くなったのは、ユーリに結婚相手がいた、と聞いた時だ。


その時の感情といったら、自分自身でも恐ろしくなるくらいの黒い感情。

ユーリを捨てたという怒りと、ユーリの結婚相手だったという男への嫉妬は半端ではなかった。

なぜユーリを捨てた?
なぜユーリを悲しませる?


目の前に捨てた男がいたら、間違いなく切りつけてしまっていただろう。

私なら。
私なら。
私なら。

心の中で何度そう言ったかわからない。
私ならユーリを幸せにしてあげられるのに。

一人になんてさせない。
不安になんてさせない。

ユーリの笑顔が見られるのなら、私はなんだってしてあげよう。


しかし、ユーリは一人で生きていく、と言う。

戻れるのなら、戻る、と。
戻れないのなら、一人で生きる術を探す、と。


メルンの花が咲き乱れる中で、彼女はそう言った。

真っ直ぐに私を見つめる漆黒の瞳の奥から、その強さを感じ取れる。


彼女は強がって言っているわけじゃない。

それは彼女なりの決意。