「あれから分かったことはあるの?」
「今、魔術士長のヴォルグが調べている。・・・実はオウラという国で、この召喚の魔術を行った形跡があると情報が入ってね」
「それは・・・。いったい何のために・・・?」
「それを今調べているんだ。いかんせんオウラという国自体がどこの国とも親交を持たない国なので、それを調べるのに難航しているんだ」
「・・・そう」
私ははメルンの花に目を落とす。
メルンの花は気持ちよさそうに風に揺れている。
ゆったりと踊るように揺れるメルンの花を見ると、ざわついた心の中が少しだけ落ち着くように感じた。
「・・・ねえ、ウィル」
「どうした?」
「私は、元の世界に帰れるのかな」
ずっとどこかで不安に思っていたことを、ウィルに言ってしまった。
ここで過ごした時間と同じように、元の世界でも流れているのだとしたら、私は何日帰ってないことになるんだろう。
高校生の頃、事故で両親を亡くなってしまったから、身内はいない。
けれど、それでも職場の人や友達、私を支えてくれる人は少なからずいた。
だから一人でも今まで頑張ってこれた。
そんな人達に何も言えないまま、この世界に連れて来られて、そして生きている。
みんな元気だろうか。
突然いなくなってしまったから、心配しているかな?
そして別れた彼氏も、いなくなったことで自分のせいだと責めたりはしてないだろうか。
考えただけで、心が押しつぶされそうに苦しくなる。

