お城の中は予想以上に広く廊下も長い。

同じ扉がいくつも並んでいて、ひとりで歩いたら自分のいた部屋に戻れそうにない。


そしてこのドレス。

ヒールは通勤で履いているから慣れてはいるけど、足まで隠れるドレスなんて着たことがないからとても歩きにくい。

何回かドレスの裾で転んでしまいそうになる。


「ユーリ、大丈夫か?食堂まで手を貸してやろう」


スッと私の前にウィルの手が差し伸べられた。


「あ、ありがとう。裾を踏みそうで」

手を繋ぐ恥ずかしさはあるけど、転ぶ恥ずかしさほどじゃない。

ここは素直に助けてもらおう。


ウィルの手はとても大きくて、それでいてあったかかった。

その大きな手に包まれた時、胸がトクンと高鳴った。



食堂の前に着く。


扉の横には兵士のような、重そうな鎧を付けた男達が左右に一人ずつ立っており、ウィルが扉の前に立つと一礼をした後、その扉を開けた。

扉が開いた瞬間に、美味しそうな料理の匂いが香る。

あまりのいい匂いに、お腹が鳴りそうなのを堪えた。