「・・・分かった。しょうがないね。今までありがと」

それしか言えなかった。
あっさりと別れを受け入れた私を、彼は少し驚いた表情で見ている。


「そ・・・そうか」

「話はそれだけ?」

「あ、・・・うん。そう。・・・じゃあ・・・さよなら」

彼はそれだけを言うと、わたしの前からいなくなった。



野中悠里(のなかゆうり)25歳。

高校を卒業して、地元の小さな会社で事務の仕事をしている。

その会社に営業に来ていた彼と仲良くなり、付き合うようになって2年。

周りの友達はだんだんと身を固めていき、そろそろ私も・・・なんて考えていたけれど。

まさか、こんな形になるとは思わなかった。


「はあ・・・。これからどうしよ・・・」

彼がいなくなり、ひとりになって初めて、そう言葉が口から洩れる。

こんなにあっけなく終わってしまうなんて思ってもみなかった。

・・・いや、そうさせたのは、きっと私のせいなんだろうけど。


「・・・帰ろう・・・」

いつの間にか陽は傾いて、空がオレンジ色になっていた。


太陽が高い位置にあった時は少し汗ばむ気温だったのに、夕方になると少し肌寒い。

薄着で来てしまったために、身体がぶるりと震える。

その時初めて、涙が溢れる。


どうしてこんなに悪いことばかり起こるんだろう。

私なにかしたのかな?


財布を落として生活苦しくなるし、残業で寝不足だし、彼には振られるし。

こんなに悪いことが立て続けに起こるなんて、私が気付かないうちに神様を怒らすようなことをしたからに違いない。