スワロウテイル

‥‥応援かぁ。高校生活最後の大会だし頑張って欲しい気持ちはあるけど、一緒に行く友達もいないし。 みちるの頭の中には次々にたくさんの言い訳が浮かんでくる。

「う〜ん。修は友達いっぱいいるから、間にあってるんじゃないかな」

「そんなことないと思うけどなぁ」

五條君が意外な粘りを見せるので、みちるは観念して正直な気持ちを吐露した。

「修は‥‥私と幼馴染なのあんまり皆に知られたくないのかなって。いや、皆知ってることなんだけど」

説明下手なみちるの話を五條君は辛抱強く聞いてくれた。

「私、あんまり友達いないし、大勢でお喋りするの苦手だし、修の迷惑になっちゃうのかなって」

あれは、中1の夏だった。
みちるは修と修の妹達と一緒に神社の夏祭りにきていた。それは毎年恒例のことだった。
たまたま桃子ちゃんと夏美ちゃんがどこかへ行ってしまって修と二人だった。
はぐれないようにと、みちるは修の腕を掴んでいた。まだ小学生気分が抜けていなかったみちるは恥ずかしいとかそんなこと思いもしていなかった。

だけど、修は違ったみたいだ。
修はクラスの友達に声をかけられた時、まっさきにみちるの手を振り払った。

みちると一緒のところを友達に見られるのがそんなに嫌だったのかと、みちるは想像以上の深いショックを受けた。
考えてみれば、修とあまり話さなくなったのもその頃からだった。


「なんか中原さんて大人っぽく見えるけど、そうでもないんだね」

五條君が爽やかに毒を吐く。
みちるはちょっとむっとして答える。

「子供なのは自覚してるもん」

「あははっ、ごめん。悪い意味じゃなくて、純粋なんだなって意味で言ったつもり」

「それ、あんまり褒められてるようには感じないけど‥‥」

「まぁまぁ。 話を戻すけどさ、修は中原さんが応援にくること迷惑だなんて絶対に思わないよ。 ね?」

「う〜ん。考えてみる‥‥」

結構話し込んでしまったせいか、五條君と一緒に図書室を出た時にはもう夕方と呼べる時間になっていた。
各運動部も練習を終えて、グラウンドを片付け始めていた。

自分達をじっと見つめている少女の存在にみちるは気がついていた。

‥‥沙耶ちゃん。彼女もまたみちるから離れていった友達のひとりだ。
みちるは彼女のことをとても好きだった。かつて振られてしまった相手にどんな態度を取っていいのかわからず、みちるは気がつかない振りをし続けた。