「……私、もう、わがまま言いません」








彼女が笑顔をみせるから。



俺はつい、その笑顔に見とれて彼女の言葉をすぐに理解出来なかった。







意味を理解すると、俺は歯を食いしばる。


改めて分かったことは、俺は最低なやつだということ。






体の前で手を握って、不安そうな彼女を抱きしめたい。




抱きしめてしまえば、もう二度と手離せない気がして、彼女に触れることなんて出来ないけれど。






わがままを言わない?




彼女がいつ、俺にわがままを言った?












「もう、しつこくしません」








珍しく引き下がらなかったあの日は、彼女の誕生日だった。




おめでとうと言ってやれば、きっと彼女はそれだけでどんなに喜んだだろう。





彼女は俺の前では、あまり笑わない。


緊張したように身体を固くして……怯えるから。




彼女に笑って欲しくて。




俺だけに、笑ってほしくて。







なのに、俺以外の奴らには簡単に笑うから、悔しくなって黙り込んだ。




そんな可愛い顔、俺以外のやつに見せないで。








独占欲から、彼女を傷つけた。



極めつけには、"うざい"なんて。


そう言ったとき、彼女はどんなに心を痛めただろう。



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