点滴台を器用に動かしながら、トイレを出る。 たったこれだけの作業でも、大変なのだ。 トイレの個室は、そんなに広くない。入院病棟内のトイレであるにもかかわらず、点滴台を持って入るようには設計されていないのだ。 まあ、上手く向きを変えながら入れると、何とか入るのだが、それを知らないのかめんどくさいのか、おじさんの中には、平気で戸を開けたまま用を足す人もいるくらいなのだ。 おじさんが悪いのか、病院が悪いのか。こればかりは俺にはわからない。