「無理して諦める必要ってあるの?」
「え……」
「だって、私は諦めなかったからこうなってる訳だし。
傷つけても想えるくらいの強さじゃないと、あいつは振り向かないと思うけど」
「…うん……………」
それでも返事を濁すあたしに、美咲はふっと微笑む。
「ごめん、これは桃華のことなのに、価値観押し付けすぎた…。
あとは、桃華の好きにしたらいいよ。
でも、ひとつだけ。……後悔は、残さないで」
「!」
ハッとしたあたしにまた微笑んで、美咲は席を立って伸びをする。
「ーーっ、さて!行きますか〜」
「行くってどこに?もう先生だってーーー」
そこまで言いかけて、ふと気づく。
美咲って元々正義感がすごく強くて…そこがヒーローみたいで大好きなんだけど…そんな彼女のことだから、きっとーーー
「流星くんを襲った人達と喧嘩しに行くの…?!」
ガタンッと椅子を倒して美咲の腕を掴む。
「やめて、あの人達は刃物持ってたんだよ!?もし美咲まで怪我したら、あたし…っ」
「平気平気!!いっぱい人連れてくし〜」
「そんなこと言っても…」
「大丈夫!私負けなしなんだから!桃華も知ってるでしょ?
安心していいよ」
「……………」
その言葉に、あたしの手がするりと下りる。
本当は、このまま引き止めておきたかった。
…けど。
あたしが引き止めたって、美咲はまたどこかで喧嘩するし、なにが変わるのって、そりゃ変わらないわけで。
…………嘘。
ただ、あたしが弱いから、なにも出来ないから、彼女に委ねてしまう。
「あたしって、卑怯者………」
教室から消えていく美咲の背中に溢れた呟きは、きっと誰にも聞こえていないんだろう。



