「とにかく、私も頑張るから三笠くんも頑張って!」
拳を握って力説したら、三笠くんはちらりと国島さんを見た後、背中を背もたれに預けてゆったりと微笑んだ。
「明日美は、川野のその気持ちが一番嬉しいと思う」
愛情いっぱいの顔に、釣られてドキドキしちゃう。
恋愛感情はもう無いとはいえ、顔とかすっごい好みだし、コスプレも似合うし最高の観賞物件なんだよね、この人。
ポーっと見ていたら、国島さんに頭をこづかれた。
「痛いです」
「うるさい。正気に戻れ」
「私はいつでも正気です」
三笠くんは観賞用で、好きなのはちゃんと国島さんですから。
これを口に出せればいいのだろうけど、私にはハードルが高い。
ゴニョゴニョと口ごもって、「とにかくみんなで頑張りましょう」と話を誤魔化した。
その後も飲み続け、いい感じのほろ酔いになったところで、三笠くんがカバンを何やらごそごそといじりはじめた。
「ところで、川野たちは通し稽古だけで終わらすってことないよね」
おもむろに取り出されたのはチケットで、私の目の前でひらひらと波打たせる。
「当然、買ってくれるよね」
彼のウィンクに私が頷かないはずがあろうか。
即決で四枚買った私に、「残り二枚は誰の分なんだよ」と国島さんがぼやいた。
もちろん、二回見に行くに決まっているじゃないですか。
オタクを舐めないでくださいよ。



