プロポーズはサプライズで


舞台上ではまだ役者紹介が行われている。とはいえ、メインの役者が三人、モブが三人。挨拶はすぐ終わってしまうだろう。
今から明日美を探したところで、当初予定したプロポーズは不可能だ。

……失敗しちゃった。

でも悲しんでる場合じゃない。明日美が無事かどうかが心配だ。

首を振って気を入れ替えると、会場を抜け出し、同じ階の立ち入り禁止になっていない場所を片っ端から覗きまくった。

女子が悪さするときはたいていトイレとかに行くもんだけどな、とトイレを覗くもいない。
念のため非常階段を通り下の階のトイレに行く。でも、明日美らしき人物はいない。


「……どうしよう」


一体どこに行ったの?
そもそも、さらわれたんなら少しくらい声を上げるはずだ。
私は隣に座っていたんだから、不穏な気配があればさすがに気づく。

でも私が気づかなかったということは……


「自分から、消えた?」


それなら、私が気づかなかったことにも頷ける。でも理由は? 

唯一考えられるとすれば、どうしてもトイレが我慢できなかったとか。でも、それならトイレにいないのはおかしいし。

ふいに、劇の内容を思い出す。

十年付き合って、結婚もしない二人。
よくよく考えれば、あのマリとテツヤの境遇って明日美と三笠くんに似てるのかな。
ふたりの場合は一度保留にしたのが明日美の方だから、責められてるような気になった……とか?