「待たせてごめん。ずっと信じなくてごめん。これからはもう疑わない。色のついた絵を描きたいんだ。だから、マリに傍にいてほしい。俺と結婚してください」
「テツヤ」
「画家の奥さんなんてろくでもないけど、それでも良ければ」
「うん。……うん」
抱き着いたマリを守るように抱え、テツヤは教師に向き直る。
「俺の勝ちだね、先生」
「ああ」
「じゃあ正直に吐いて。あの時絵に手を入れたのはマリじゃないだろ」
「……そうだ、俺だ。悪かった」
「謝ってくれればいいんだよ。それに、マリを捕まえられたのは先生のお陰だしね。それに……」
はらり、と天井から白いものが舞い落ちる。
「あなたは俺を育てた人だ。あなたの言う通り、俺は心の闇を描いて今の地位を手に入れた。それはアンタが俺にくれた鬱屈を描いたものだ」
「俺に最初の奇跡をくれたのはアンタだったんだよ」
教師の上にも白いものが落ちる。
「ほら、すべてのを浄化する雪だ」
それはどんどん増え、画家の肩にも降り積もる。
「次は雪が描きたいなぁ」
画家がぼそりとつぶやき、「じゃあ描きにいこう?」とマリが手を引く。
前面のスクリーンが落ち、雪が降りしきる映像が流される。
そして再びスクリーンが巻き上げられると、そこにはスクラッチの絵だけが残されていた。
その絵には、「クリスマスの奇跡」という名が付き、結構な値段が付いたそうだけれど、ふたりは一生売らずにアトリエに飾っていたのだという。
そんなモノローグに続き、照明が落ちる。
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