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「……うっ」
見入っていた私は、思わず声を出してしまった。
つ……辛いよ。
好きな人の悪い面ばかり見せられて、孤軍奮闘するヒロインがかわいそうで胸が痛くなってきた。
信じたいけど、信じられなくなったって責められないんじゃない?
大体あの文なに?
まさか死んじゃったとかじゃないよね。
なんでもうちょっと説明していなくならないのよ。
私がよっぽど変な顔をしていたのか、左側の国島さんが私の手をそっと掴んだ。
途端に、私は一気に現実に引き戻されて彼をガン見してしまった。しかし彼はひょうひょうとした顔で舞台を見続けている。
どうしてそうしれっとした顔で手をつないだりできるの!
私、周りが気になって仕方ないのに。
もうもう、と繋がれた手の熱さを感じたままそっぽを向いた。
逆向きの隣では、明日美が両手を口の前で組んで、息を飲んでいる。もう今にも泣きだしそう。
だよね、私も泣けてきそうだよ。
どうして画家は色々説明してくれなかったんだろう。
早く帰ってきて、説明してほしい。
黒いだけの板で、どうやって希望をつなげっていうの。
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