プロポーズはサプライズで

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舞台監督さんのあいさつの後、舞台リハーサルが開演する。

今回の劇はクリスマス講演で『ブラックボード』というタイトルだ。
クリスマスからブラックボートが連想されないので、ちょっとした違和感を感じる。

観客席の照明が落とされ、会場は真っ暗になる。

やがて舞台の上に一筋の光が差し込んだ。
舞台上にはスクリーンが張ってあり、そこに点のように映っていた光が、どんどん大きく広がっていく。

穏やかな音楽が流れ、古いフィルム映画のような画面が映された。

小さな子供ふたりの影、笑い声とともに、はしゃぎまわる映像。

画面が早回しになり、次に映ったのは男女の学生の影映像だ。

セリフは入っておらず、動きで想像するしかないのだけど、女の方が平手を打ち教室を飛び出すが、男が追い、言い合うようなシーンのあと、二人は抱き合った。きっと仲直りをしたのだろう。

まるで走馬灯のような映像が終わると、スクリーンが巻き上げられる。


そこから、三笠くん扮する“男”が現れた。

舞台背景はアトリエらしく、書きかけの絵がたくさん置いてある。

色彩は無く、どれもモノクロの絵だ。
書かれているものは空想の産物と思われるものが多い。サクランボを食べたダチョウに似た生物。意志を持ったハサミが現代のビルを切り、その奥に違う世界が顔を見せているもの。渦を巻く水流を見ている男女。どれも見ているものをざわつかせる絵だけど、それだけに印象に残る。