「あの服装なら性格設定どんなんだと思う?」
「売れてたらもっとこぎれいな格好すると思うし、ちょっと偏屈っぽいんじゃないかな」
「でもだったらツンデレがいい、私は!」
こぶしを固めて力説していると、さっきの女の子たちがチラチラと視線を向けてくる。
しかもなんか刺々しい視線?
うるさかったかなと慌てて声のボリュームを落とす。
明日美もそれは感じているのか、ちらりと私を見上げると「まだ時間大丈夫だよね。八重ちゃん、私トイレに行きたい」と言った。
「あ、じゃあ私も行くよ」
彼女たちの脇を通り過ぎるとき、一番かわいい子の「なんだ、ふつーじゃん。しかもダッサ」というつぶやきが耳に入った。
誰がダサいって?
明日美は今日も清楚系でまとめているし、私だって仕事終わりだからそれなりにビジネススタイルだよ!
適当なヤジ飛ばすなや!
全く感じの悪い。
三笠くんのファンからすれば、あの距離感で普通に話す私たちは嫉妬の対象になるのかも知れないけどね、人としてその態度はどうかと思うよ?
化粧室に入って、明日美は個室ではなく鏡と向かい合った。
「どこか変だったかなぁ」
目元をまじまじと見ながら、あまり濃くないお化粧を直していく。
ほら、気にしちゃったじゃん。
確かにさっきの子は美人だったし、比べれば私も明日美も容姿は普通だけどさ。
ああいう時に口に出しちゃう性格の悪さって顔に出ると思うんだよね。
「大丈夫。明日美は可愛いよ」
見た目で負けてたって、性格で三割増し可愛く見えるから大丈夫。
そう付け加えたら、前髪を引っ張りながら眉を下げていた明日美が、ふわりと笑う。
「……ありがとう。八重ちゃん」
不思議だよね。
明日美が喜んでくれたって思うと、私もなんだか嬉しいんだもん。
うんやっぱ。
明日美には笑っていて欲しいんだよねぇ。
そしてできれば、堂々と三笠くんの隣に立っていてほしいって思う。



