プロポーズはサプライズで



「ファンなんです!」


 甲高い声に、意識が引っ張り出された。
振り返ると、衣装を着込んだ三笠くんがオシャレな格好をした三人の女の子に囲まれているのが見える。

今回は画家の役って聞いているけど、割と普通の服だ。ベレー帽が画家風なだけで足元まであるトレンチコートは別に画家だからという感じはしない。コートの中も普通にジーンズと色あせた感じのするシャツで、敢えてところどころが黒く汚されている。


「え、サイン?」


その中でもとびきり可愛い感じのする女の子に赤色のTシャツを渡されて、三笠くんは頭をかいた。

あのTシャツ、私も持ってるや。以前の公演の時に販売されたやつだ。あの時のは正義の味方にあこがれる社会人がレンジャー隊を作るっていうコメディでTシャツも五色あったのよ。日常用に使っているのがイエローで保管用がレッド。お金に余裕があれば全色集めたかったのに。


さらさらとサインを書き入れ、「ありがとう」と営業スマイルで応えると、きゃああと黄色い歓声が上がった。

今日来るのはほぼ身内だと聞いていたのに、そんな中にもファンがいるのか。さすが三笠くんだなぁ。


「いつも来てくれてるんだね。今日は誰の紹介? 本番も来てくれると嬉しいな」


そこの宣伝は忘れないのね。案外商魂逞しいなぁと笑ってしまう。


「はいっ、もちろんですっ」


三人娘は声がそろわない。同じことをバラバラに話すからやかましく感じるんだよなぁ。