マッドワールド










それを見たチェシャは、ニヤリと意地悪く笑った。







「なに?ドゥー?遊んでほしーの?」



ニコニコとしてる割に、雰囲気が。




目が…………猛獣の目だわ。






「いや、遠慮しておくよ……」







「……そう言わずにさ…ふふ」







ドゥーは話しながらも席から立ち上がり、ズルズルとチェシャから距離をとった。



が、チェシャもそれにあわせて近づいていく。



そしてついに。




「………今日こそ食ってやる!!」


「ぎゃあああああああああ!!!」



2人は怒涛の勢いで追いかけっこを始めた。













……というか、私をわざわざ起こしておいてどこ行ってんだあの猫。









「ははっ…ネズミくんも猫くんも元気なものだ」


ケラケラと乾いた笑い声を上げるハッターは、帽子を押さえながら首を傾け、私を見た。





「どうだい?お嬢さん。お互い連れを1人無くしたわけだ。一緒にお茶でも」






なくしたって。



なんか、死んだみたいに言わないで欲しい。






「……そうね、じゃあお邪魔しようかしら」





私はドゥーが座っていた反対側のハッターの隣に腰掛けた。



「そういえばさぁ、アリス〜」




人参の形のクッキーをミルクティーに浸しながらチョコケーキを頬張る三月兎が、もごもごと私の名を呼んだ。




「何かしら?」




「白兎がね、また薬がほしーんだって」





「また?」




薬、とは言うが。






その正体は、私が作ったリンゴジュースなのだけれど。






何故かこのセカイは私がいた世界の食べ物と同じものがない。





見た目はバナナなのに味は桃だったり。




レモンの汁を絞ったら容器に触れた瞬間青色になる謎の液体が出てきたり。






とにかくヘンテコなものばかり。




その中で唯一リンゴだけが普通だった。






そしてこのセカイでリンゴは鑑賞用らしく、食べ物として普及していなかった。




食べることに抵抗があるなら、ジュースならどうかしら。






そう思って作り、何でも口にする三月兎に上げたところ。





飲んだ瞬間、兎だったその姿は人の姿になっていた。




不思議に思って、ドゥーや白兎にも飲ませたところ、飲んだ動物はみんな人の姿をとった。



ただ、しばらく経つと元に戻ってしまうのだが。





それでもここの動物たちは人の姿に憧れがあるらしく、何度も私に作ってくれとせがむ。




それから、私が作るリンゴジュースは薬として有名になったわけで。








「白兎は切れるのが早くないかしら。まだ2週間しか経ってないわ」






「そうだろう!俺なんて一年近く持つのにな!」



なんて顕著に出る個人差だ。