コクリバ 【完】

私の部屋の窓辺に水色のヘルメットと黒いヘルメットが並べて置かれている。

山下さんのは、玄関にゴロンと無造作に放置してあるけど……

二つ並んだヘルメットを見ながらコーヒーを飲んだ。

ゆったりした時間が流れる中、今まで言えなかった高校時代の辛かった思い出を話した。

市原先輩から本当のことを聞いたあと、先輩に会いに走ったこと。
橘先輩との相合傘を見て、諦めたこと。

卒業式で先輩の背中を見送ったこと―――

それを黙って聞いていた高木先輩が、今度は私が知らなかったことを教えてくれた。

教室で市原先輩が堂々と私との関係を認めたこと。

信じられずに呼び出したら「悪かった」と謝られ、合意の上での行為だったと告げられたこと。

忘れようと自棄になっていた時、道端でボロボロになった私を見つけて、「自業自得だろ」と思ったということ。

OB会の日に「妹が消えた」と言い出した兄の言葉に、全身の血が引き、必死で探し回ったということ。

「でも、あの時、先輩は私じゃなくて吉岡を庇ってました」
「ちょっと前まで俺がキャプテンだったからな。それにあいつの気持ちも分からないでもない」
「吉岡の?」
「あいつもおまえに裏切られたと思ってたんじゃないか?だから、おまえをめちゃくちゃにしてやりたかった…と、俺は思った」
「先輩も?」
「そうだな。もう関わりたくないって気持ちと、おまえに復讐してやりたいっていう気持ちがあったな」

恐ろしい。