コクリバ 【完】

07

ナナ……

気付くと同時に頬が熱くなる。

先を行く高木誠也はさっさと階段を上がっている。

「まさか、“0”は“ラブ”とか読んだりして……」

照れ隠しの言葉は、声が上擦った。

階段を上りきった高木誠也がチラリと後ろを振り返って、そのまま先へと歩いて行く。

そうだよね。
それはいくらなんでも調子に乗り過ぎた。
ただの“・”とか、よくて“&”くらいの意味だろう。

そう思っていたら、

「それ以外、ないだろ」

前の方から、そんな低い声が聞えた。

見ると、既に私の部屋の前で立ち止まっている高木誠也が、外に目をやって待っている。


高校時代から変わってないアドレス。
高校時代から“407”―――


頬に熱が集まり、手足がギクシャクと上手く進まない。

鍵をバッグから取り出すけど、そのままカシャンと言う音を立てて、下に落ちるし。

「何やってんだよ」

横から聞こえた不機嫌そうな声。思いっきり耳たぶ引っ張ってるくせに。