「堤!」

その声に周りにいた他の自衛隊チームも反応した。

「どうした?」
「何したんだ堤」

「いや。高木さんが笑ってるんですよ」

「妹さんとだろ?」
「仲良いなぁ」

「高木さん。本当に妹さんですか?」

堤さんの質問に固まる私たちの背後で、真理子先生が吹きだした。

「あー、やっぱり違うんでしょ?」

「違うのか?」
「妹って言ったよな?」

「うるせーぞ」

「じゃあ、緒方さん、俺の隣りに座ってくださいよ」

そう言って堤さんが私の方へ手を伸ばした時、高木先輩が素早い動きでその手を払い除けた。

「いっ……」
「……」
「あ……」

3人で固まった。

その直後、同時に笑いだした高木先輩と堤さん。

「マジっすか?高木さん、マジっすか?」
「なにがだよ」
「高木さんも嫉妬とかするんですか?」
「堤。おまえ、マジうるさい」
「高木さんが女を大事にするの、初めて見た」
「おい!堤!」
「いてっ」

どうやら高木先輩がテーブルの下で堤さんを蹴ったらしい。

「奈々。帰るぞ」
「えっ?」
「高木さん。いいじゃないですか。俺もっと高木さんの彼女さんと話してみたいっすよ」

堤さんは笑いを堪えているように綺麗な顔をしかめている。
それには答えず、高木先輩は耳を引っ張りながら後ろの席に向かって話し出した。

「山下さん。先に帰ります」
「はぁ?今、来たばかりだろ?」
「飲みに誘ったら帰っていいって言ったじゃないっすか」
「そりゃそうだけど……」

山下さんと話しながら、高木先輩はもう帰り支度を終わらせているようで、しきりに私の腕を引っ張る。

「お先です」

それだけ言うと高木先輩はさっさと出口に向かって歩いて行った。

私は真理子先生に「すみません」と頭を下げると、真理子先生は嬉しそうに微笑み何度も頷いていた。