6月の席替えで吉岡と離れると、もう二人で話すこともなくなって、そのことを少し寂しく思っていた。
そんな普通のクラスメートな関係が1週間ほど続いていた時だった、コクリバに呼び出されたのは。


「奈々、明日は部活に来なくてもいいからね」
絢香がニヤリと私を見てる。

当然、その後どうなったか教えるよね!
って、言いたいんでしょ。

放課後の教室で、絢香とはいろんな話をした。

主に恋の話。
そして噂話。

絢香とは部活も同じ美術部。
別に絵が得意とかではなかったけど、絢香と一緒だし、楽そうだからという簡単な理由で。

「サンキュー絢香部長」
二人でケラケラと笑った。

こうやって、無駄に騒いでたことは、高校生活の大切な思い出。

「あ、でも本当に明日は部活休みじゃなかったかな?」
カバンから部活の予定表を出した絢香が、
「ほら。今月から土曜日は部活なしだ」
教えてくれた。

「え~、部活ないのに、わざわざ明日、学校来るのめんどくさい」
私の照れ隠しの強がり発言を聞いて、吹き出した絢香。
「はいはい……」

余計、恥ずかしい。

「奈々、今日はバスケ部のノゾキどうする?」

絢香も隣のクラスのバスケ部員“オサムッチ”に、中学の頃から恋していて、私たちは時々、体育館の足元の小窓からバスケ部の練習を覗いていた。

バスケ部は、うちの学校ではイケメン揃いと大人気で、体育館の周りで見学の女子を見かけない日はない。

「私は…やめとく」
絢香と話す間、ずっと触っていて小さくなったなんかの紙をちぎりながら、小さく答えた。

「ふ~ん。わかった」
ニヤっと笑った絢香と目が合う。

見られたくなくて視線を逸らせると、
「月曜日にいっぱい聞かせてもらうからね~」
飲みかけのイチゴミルクを飲み干して、絢香は颯爽と出て行った。

誰もいなくなった放課後の教室
窓際までゆっくり歩いて行き、そっとその机に触れて、

「朝イチって何?
せめて9時とか言ってよ」

主のいない机に悪態をついた。