「連絡してから来いって言った意味が分かった。はっ。こういうことだったんだな。俺が突然来たらそりゃまずいだろ。なぁ、奈々。彼氏か?」

洋祐先生が彼氏なら、あなたは何なんですか?

「……」

じりっと近付いてくる高木誠也を冷えた目で見ていた。

「変わってねーなぁ、おまえ。昔も、今も。今度は俺が浮気相手か?なぁ!なんとか言えよ!」

見下すように睨みつけられ、視線を逸らした。

もうダメだ。
もう何を言っても信じてもらえない……


背後からバスンと車のドアが閉まる音が聞こえ、続いて足音が近付いてきた。

「こんな静かなところで声を荒げるのはやめなさい」

洋祐先生の静かな怒りに満ちた声が、背後から響く。

「あの…先生。大丈夫ですから」

そう答えるのが精一杯。喉が震えている。

「……先生?」

高木誠也のその質問に私が答えるよりも先に、洋祐先生が口を開いた。

「私は、彼女が勤めている幼稚園の副園長だ。ここで何をしている」

「副園長…」

高木誠也の眉間にくっきりシワが寄って、今にも洋祐先生に飛びかかりそうなほど、その姿を睨んでいる。