コクリバ 【完】

足が動かない。

階段下にいる高木先輩がこっちを見ている。

車を挟んで、見つめ合っているけど、その表情が分からない。


いつからいたんだろう……

ずっと見られていたんだろうか?

また、誤解されるのだろうか?

……誤解?

洋祐先生とのことは、誤解?


膝が震えだす。

高木先輩が視線を逸らして右の方へ歩き出すと、駐車場の隅の方に黒いバイクが止めてあるのに気が付いた。

そこに向かって真っ直ぐ歩いて行く高木先輩。私の方は見ようともしないで……

「ま、待って」

聞えてるはずなのに、足を止めてくれない。

車から離れ、もつれる足で近づき、もう一度声を出した。

「いつからいたんですか?」

大きな背中は止まることなく、バイクに一直線に向かう。

その後を追うように話しかけた。

「あの、今日は仕事で……あの、でも、今日は平日ですよ。来ても大丈夫だったんですか?」

「……」

「遅くなったのは、研修に行ってて……連絡してくれたら、もう少し早く……って、待って、先輩!」

「先輩って言うなっつったろーが!」

胸に突き刺さる怒声。

思いだすのは高校時代、私の家での事件。
誤解されて傷つけられたことに胸が張り裂けそうだったこと。

今もまた全身で私を拒絶するような立ち方と、少しも信じてない目で睨まれている。


私の中の薄いガラスのようなモノが、音を立てて割れた。