コクリバ 【完】

「奈々先生」
「はい」
「私と二人きりの研修はイヤだったんですか?」
「え?」
「友紀奈先生に、行きたくない、と言っていたんではないんですか?」
「違いますよ。友紀奈先生が行かせたくなかったんですよ」
「どうして?」
「え?どうしてって…それは…それが、女心じゃないんですか?」
「誰の?」
「友紀奈先生の。それが友紀奈先生の女心ですよ」
「なぜ、友紀奈先生なんですか?」
「はい?」
「あなたじゃないんですか?」
「私ですか?」
「避けられてるのかと思いました」
「避けてないですけど……」
「じゃ、なぜ一人で行くと?」

堂々巡りっ。

「友紀奈先生が、そう言ったんですって……もしかして、洋祐先生、友紀奈先生の気持ちが分からないとか……」
「友紀奈先生のですか?あなたのじゃなくて?」
「え?気付いてないんですか?」
「誰の気持ちも分からない。女の人は難しすぎる」

あんなにあからさまな友紀奈先生の態度に、洋祐先生は気付いてなかったんだ。

でも、私から教えるっていうのもなんか変だし……

「奈々先生」

そう言って洋祐先生が左手を出して、数歩先で私を待っていた。

その背後には、風に揺れる桜の花びらが舞っている。