コクリバ 【完】

「セイヤ。分かったらさっさとどけよ。だいたい、俺のってなんだよ。お前ら付き合ってるとかじゃないんだろ？」

市原先輩の問いに答えたいのに高木先輩がまだ私のこと睨んでるから、
「は…ぐっ」
言葉を飲みこんでしまった。

「いや。付き合ってる」

えー！

「そうだろ。緒方奈々」

え？いつから？
じゃなくて、なんで？
「そ……え？……」

何が何やら分からない。
聞きたいのに切れ長の瞳が私を睨むから言葉が出てこない。
「でも……あの……」
下手な事言っちゃいけないとか、それとも人違いしてるんじゃないかとか、ぐるぐる頭の中を言葉が回ってる。

「セイヤ。おまえ…緒方先輩の妹なんだろ。バレたら半殺しだぞ」

市原先輩の言葉にそれはないだろ。って心の中でツッコんだ。
なのに、
「言うなよ。サトル」
真に受けてるよ。

「緒方奈々」

改まって向き直る高木先輩が怖くて少し後ろに下がった。
なのに……

「帰り、送っていくから」

これまでの勢いはなくて、低い小さな声で高木先輩が言う。

「迎えに来るまで、ここで待っててくれ。今日は、逃げんなよ」

その穏やかな言い方に
頭の中の整理がつかないまま……

「はい……」

答えてしまった。