「……」
「……」
「……」
「……」
マスターが立ち去っても何も話さないで沈黙が続くから、お腹が痛くなりそう。
だけど、緊張しているのは私だけじゃなかった。
先輩の手が震えている。
お冷のグラスに手を伸ばした時に、大きな指が微かに震えているのが見えた。
高木先輩が、あの頃よりも大人になって堂々とした雰囲気の先輩が緊張している。
私は少し落ち着いてきた。
結局、ブレンドが2杯運ばれてくるまで、高木先輩が話し出すことはなかった。
「お待たせいたしました」と他人行儀なマスターが置いていったカップから、珈琲の良い香りがする。
心を落ち着けるために、何も入れないで珈琲を味わう。
たぶん、これが最後。
何を言われるか分からないけど、長いこと先輩のことを想ってきたこの気持ちに決着を着けなくちゃいけない。
そういう予感がする―――
「おまえさ……」
先輩が話始めた途端、全身に緊張が走る。
「なんで言わなかった」
…………え?
「なんで、サトルと浮気してないってこと、俺に言わなかった」
「……」
「……」
「……」
マスターが立ち去っても何も話さないで沈黙が続くから、お腹が痛くなりそう。
だけど、緊張しているのは私だけじゃなかった。
先輩の手が震えている。
お冷のグラスに手を伸ばした時に、大きな指が微かに震えているのが見えた。
高木先輩が、あの頃よりも大人になって堂々とした雰囲気の先輩が緊張している。
私は少し落ち着いてきた。
結局、ブレンドが2杯運ばれてくるまで、高木先輩が話し出すことはなかった。
「お待たせいたしました」と他人行儀なマスターが置いていったカップから、珈琲の良い香りがする。
心を落ち着けるために、何も入れないで珈琲を味わう。
たぶん、これが最後。
何を言われるか分からないけど、長いこと先輩のことを想ってきたこの気持ちに決着を着けなくちゃいけない。
そういう予感がする―――
「おまえさ……」
先輩が話始めた途端、全身に緊張が走る。
「なんで言わなかった」
…………え?
「なんで、サトルと浮気してないってこと、俺に言わなかった」

