コクリバ 【完】

なんとか横断歩道までたどり着き、信号待ちの集団に加わった。

ここを渡り切ったら、そっと振り返ろう。

それまでは、我慢……


「おい」

低い、痺れるような声に、私の全身がピクリと跳ねた。

鼓動が加速する。


「おい……緒方奈々」

背後から聞こえるその声に、あー本物だ、と思った。

本物が呼ぶ私の名前に泣きそうになる。


声が全然変わっていない―――



「おいって」

苛立つような声に、ようやく振り向いてもいないことに気付いた。

横断歩道の集団が動き始めるのを隣に感じながら、ゆっくり振り帰ると……

すぐ後ろのところで真っ直ぐ私を見つめる高木先輩。