コクリバ 【完】

うちの幼稚園は、毎年、仕事始めの日に全員で初詣に行き、今年一年の無事を祈る。
今時、古風だと思うけど、創立以来続く伝統らしい。
洋祐先生はいずれその伝統を担っていく人。

兄を見送った次の1月4日、私もいつものジャージ姿ではなく、今日ばかりはスーツを着ていく。

着替えをし、メイクをし始めた時に、携帯が震えた。

見ると、洋祐先生からのメール。

【おはよう。神社へは電車で?】

一行だけのメールのやり取りは続いていて、あの焼き鳥屋のあと断った気まずさは最近感じなくなっていた。

【はい。電車で行きます。帰りに寄りたいところもあるので、ちょうどいいんです】

他の先生たちの前で洋祐先生の車から降りていく訳にはいかない……でもその前に、誘われているわけでもないか……

勝手に先読みして断ったみたいで、恥ずかしい。

メイクを再開し、朝の支度に追われていたら、また携帯が震える音がする。

洋祐先生からのメールだろう、とすぐに取らなかったらいつまでも震えている。

あ、電話だ。

急いで携帯に近づいた時には電話は切れていた。

着信履歴の欄には知らない番号。

不思議に思ったけど、かけ直すこともない、と無視することにした。