コクリバ 【完】

「吉岡も、またね」
「送るよ」
「いいよ。方向違うし」
「いいから……」

そう言うと吉岡は私の前を、私の家の方へと歩き出す。

「何があった?」

吉岡が後ろを見ないで聞いてくる。

「そっちこそ」
「俺は……引きずってるだけ」
「この前別れた彼女?」
「あぁ。お前は?」
「何もない。ただ、怖かっただけ」
「何が?」
「自分を見失うのが……って言うか、なんだろ……傷つくのが?」

吉岡が振り返って私を見る。

「……」
「……なによ」
「……俺で良かったら、いつでもやるよ」
「は?何を?」
「タネ」
「……バッカじゃない」

異常なほど焦ったことが恥ずかしかった。

それからは吉岡を意識してしまい家までの道が長く感じた。

一応「家に上がっていく?」と誘ったけど、「もうすぐOB会で智さんには会うから」と断られた。

ホッとした。

「じゃ」

私を見送ったあと、吉岡は走って戻って行く。

その背中に密かにエールを送った。

もう、友達というより、母や姉に近い境地。

頑張れ、吉岡。
私も、頑張る―――


年末年始は何かと母の用事に付き合わされ、普段は離れている分の親孝行だと思って言われるままに動いた。
兄も帰ってきていて、久しぶりの家族団らんだと喜んだのは父だけではない。

私も嬉しかった。